本当に、新しい音源システムが必要だったの?

前回のおしまいに、「従来の音源システム、とりわけPCM音源(AWM2音源)では、音色変化が複雑すぎるため、トランペット型の楽器を再現しきれなかったのです」と書いていたのを覚えていますか? (覚えてない人は、ここをクリック)

「へー、そんなもんかね〜」とかなんとかいって、読み飛ばしちゃった人も多いんじゃないかと思いますが、よ〜く考えてください。本当にそう思いますか?

僕が想像するに、PCM音源のトランペットの音で満足している人は結構多いと思います。たとえば、「PCM音源のトランペットは歯切れがいいし音抜けもいい、音に張りがあるし艶っぽさもある、こんなに生っぽいのに、PCM音源でトランペット型の楽器が再現できないなんて冗談でしょ」って思ってる人いませんか?

この意見は、あながち間違いというわけではありません。PCM音源は紛れもなく本物のトランペットの音を録音し、それを再生して音を作っているわけですから、生っぽい音がしているのは当然です。

たとえていうと、これは動物の写真を見ているようなものです。風に向かって立つライオン、高い枝の木の葉を食べるキリン、悠然と地平線を眺めるゾウ。どの動物も本物そっくり、というより、本物そのものです(何しろ写真ですから)。

ところが動物園に行ってみると、風に向かって立っていたはずのライオンが寝てばかりいたり、悠然と地平線を眺めていたはずのゾウが神経質そうに体を揺すっていたりします。

しかも、どの動物もところかまわずウンコをするものだから、やたらとくさかったりします。

PCM音源の場合もまったく同じ。

ある時ある場所で録音したトランペットの音は100%再現できるものの、それは風に向かって立つライオンの写真と同じで、「トランペットはかくあるべし」という既成概念に基づいて作られた括弧付きのトランペットでしかなく、活きたトランペットとはまったく別物です。

なめらかなフレーズを演奏すると、それがはっきりと判ります。PCM音源では、どんなに上手く演奏しても、録音した1音1音を張り合わせたような演奏になり、音のつながりが不自然に聞こえます。ちょうど新幹線のアナウンスが、「1番線」「の」「列車」「は」、という不自然な切れ方をするのと同じです。録音したそれぞれの単語だけを聴くと100%本物と同じなのに、フレーズにするとつながりが不自然に聞こえるのです。

本物のトランペットは、歯切れや抜けのいい音だけでなく、メローな音、割れた音、こもった音、繊細な音など、さまざまな音色で演奏できます。しかも、フレーズを演奏したときの音のつながりが自然で、音量が変化するときには必ず音色やピッチが一緒になって変化するなど、PCM音源のトランペットとはまるで違います。

トランペットの音色の変化や表現力、自然な音のつながりを再現するためには、やはり新しい音源システムが必要だったのです。


NEXT