最終回となった今回の講座では、これまでご紹介してこなかったシンセサイザーとしてのVA音源の魅力に迫りたいと思います。

ちょっとばかりマニアックな世界に入る予定なのですが、「難しいのはちょっと…」という方も、強度のマニアック・アレルギーということでなければ、ややっこしい部分を適当に読み飛ばしながら、ぜひ読み進んでみてください。きっと、おもしろいと思える瞬間があるはずです。

VA音源のシンセサイザーとしての魅力と、VA音源用のエディターソフト

シンセサイザーとしてのVA音源の魅力はどこにあるのでしょうか?

具体的な操作に入る前に、VA音源と従来のシンセサイザー音源とを比較しながら、シンセサイザーとしてのVA音源の魅力をご紹介しましょう。

従来のシンセサイザー音源とはまったく異なる音源構造をもつVA音源は、音作りのアプローチもまったく違っています。

従来のシンセサイザー音源では、音を音程、音量、音色という3つの要素(これを音の3要素といいます)に分解し、各要素を個別にコントロールすることで音作りを行っていました。いわば、分業体制で音を作っていたわけです。たとえば、音にビブラートをかけるときには「音程」を揺らす、トレモロをかけるときには「音量」を揺らす、など。

一方、VA音源は物理モデルを元にして音作りをします。これまでにも説明したように、音源内部に楽器の物理構造をそっくりそのまま再現し、それに息を吹き込んだときの空気の振動を計算して音作りを行うという仕組みです。

この方法では、あるパラメーターを変更すると、音程、音量、音色すべての要素が微妙に関連しあって変化するため、自然な音作りが行えます。
たとえば、音にビブラートをかけるときは、物理モデルのマウスピースをくわえている口や唇の形(アンブシュア)を周期的に変化させます。そうすることで、音程や音色が微妙に変化する自然なビブラートをかけることができるのです。

簡単操作で多彩なエディットが可能な「VLビジュアルエディター」

VA音源では、音をゼロから作る場合も、音源内部に作られた物理モデルの性質を1つ1つ設定するという方法をとります。大きさや形、材質など、設定するパラメーターによって、サックスやトランペットなどの形にしたり、または現実ではあり得ないような形にしたりが自由に作れてしまいます。イメージとしては、ブリキ板をトンカチでたたいて楽器を作っているようなものだと考ください。

ただし、現実はそう甘くはないというか、そうやって作った楽器で正確な音程を出そうと思えば、音響学的な専門知識が必要になります。よく考えてみればすごく当たり前のことですが、何もないところから楽器を作るわけですから、トンカチとブリキ板からトランペットを作るのと一緒で、たとえトランペットのような形ができたとしても、ちゃんとした音程が出せるはずがないですよね。それどころか、そもそも音が鳴らないケースの方が多いと思います。

VA音源を搭載した初代のシンセサイザーVL1にも物理モデル自体を直接エディットするパラメーターは搭載されていないのですが、その理由として当時の設計の方が説明されていたのが、「音が鳴らなくなるから」ということでした。

そこで、音響学的な知識のない僕たちのために作られたのが、VLビジュアルエディターです。

このエディターは、「今ある楽器を組み合わせて新しい楽器を作ろう」という発想からできています。
具体的に説明すると、音(振動)を作り出すマウスピースのあたる部分(ドライバーと呼びます)と、音(振動)を増幅する管や弦にあたる部分(パイプ/ストリングと呼びます)がそれぞれプリセットとして用意されていて、たとえばトランペットの管にサックスのマウスピースをくっつけたり、サックスの管にフルートのマウスピースをくっつけたりして、新しい楽器をつくりだす、という仕組みになっています。
ゼロから楽器を作っていたエキスパートエディターに比べるとはるかに簡単で、これだと音が鳴らない、音階が出ないという心配がありません。
また、音のバリエーションを出すために、VA音源のパラメーターのうち、比較的理解しやすいものが操作できるような仕組みにもなっていて、ちょっぴりつっこんだエディットも体験できます。
この講座の後半では、VLビジュアルエディターの使い方について詳しく説明するつもりです。

VLビジュアルエディターは、こちらからダウンロードできます。

●Windows版

ところで、VA音源には、物理モデルを使って音(振動)を発生し増幅する部分(インストゥルメントと呼びます)に付随して、フィルターやパラメトリックイコライザー、モジュレーターなど従来のシンセサイザーの音づくりの主役ともいえる機能によって音を加工する部分(モディファイアと呼びます)も用意されています。この部分は、普段は脇役として機能しているのですが、実はこの部分だけをシンセサイザーとして独立させてもいいほどの能力を持っています。

その他のエディター

●ゼロから音作りが可能な「エキスパートエディター
  (VL70-m Expert Editor β1.1 for Macintosh)

●アナログシンセ感覚で音作りする「アナログエディター
  (VL70-m Analog Editor β1.1 for Macintosh)です。

このソフトは、VCO、VCA、VCFといったモジュールで構成されていて、まるでアナログシンセサイザーを操作しているような感覚でVA音源を操作できます。また、出てくる音もまるでアナログシンセサイザーで、VA音源の奥の深さというか可能性を感じさせられます。

NEXT