物理モデルによって音づくりをするVA音源

トランペット型の楽器を再現するために開発されたまったく新しい音源システム、これがVA音源の正体です。

では、トランペット型の楽器を再現するのになぜVA音源が適しているのでしょうか?その秘密は、VA音源の仕組み(音源構造)に隠されています。

ここでは、VA音源の仕組みについて説明したいと思います。ちょっと話がカタくなるかも知れませんが、しばらくお付き合いください。


VA音源の構造は、これまでのシンセサイザーとはまったく異なっています。

これまでのシンセサイザーは、多かれ少なかれ、必ず音作りの元になる波形を本体の中に内蔵していました。たとえば、アナログシンセでは矩形波、鋸歯状波などを元にし、FM音源でも変調の元になるサイン波は内蔵していました。多くのサンプリングウェーブを内蔵するPCM音源はその集大成ともいえるでしょう。

しかし、VA音源には元になる波形がいっさい内蔵されていません。

元になる波形の替わりに、VA音源の中には、自由に形を変えることができる管楽器の基本モデルが内蔵されています。

ちょうど、パーマンに出てきたコピーロボットのようなモノ(ポケモンの種類でいうとメタモン)がVA音源の中に入っていると考えてもらえればいいでしょう。

今、トランペットのボイスが選ばれたとしましょう。すると、VA音源の中の基本モデルは、ボイスデータにしたがって形を変え、あっという間にトランペットに変身します。細い管に大きく広がったベル、3本のピストンに小さなマウスピースなど、形、大きさ、材質感をはじめ、細かいところまでトランペットと同じ構造に変化するのです。しかも、そのモデルには、トランペットを吹くプレーヤーの唇や舌など、トランペットの音に影響する要素がすべて作り込まれます。

ただし、変身するといっても、コピーロボットやメタモンのように姿形までそっくりになるわけではありません(VA音源を分解しても、トランペットの模型などは出てきません…当たり前)。VA音源の場合は、トランペットと同じ形、大きさ、材質感(こういった要素をひっくるめて“物理構造”といいます)を持った架空のモデルを作ります。

ちょっと余談になりますが、元の楽器と同じ物理構造を持ったモデルということで、このモデルのことを物理モデルと呼びます。また、物理モデルを元にして音作りを行うことから、VA音源のことを物理モデル音源と呼ぶことがあります。

VA音源という名前の由来については、ご存じの方も多いでしょう。つまり、アコースティック楽器を架空(バーチャル)で作り上げることから、バーチャルアコースティック(VA)音源と名付けられた、ということです。

さて、こうして作られたトランペットの物理モデルに対して、プレッシャーという力を加えてやります。プレッシャーとは物理モデルに対して息を吹き込む力で、プレッシャーをかけることでトランペットを吹いたときとまったく同じ状態が再現できます。

プレッシャーが弱いと、管の中を息が通る音だけが出てきます。(びっくりしませんか?管の中を息が通る音が聞こえるんですよ!!)

プレッシャーを少しずつ強くすると、徐々に唇がふるえはじめ、ここではじめて音が発生します。唇の振動によって発生した音は、管の中に伝わり共鳴が起こり、ここではじめてトランペット特有の音が作られるのです。

音が鳴ったといっても、プレッシャーが弱い間はピッチが安定しません。鳴らしたい音の1オクターブ下の音が出てしまったり、音程がふらふらしたりします。(モノホンのトンペットもまったく同じ。ピアニシモでハイトーンを出すような曲には泣かされました…涙)

またまた余談ですが、シンセサイザーを演奏するときには、このプレッシャーを、ブレスコントローラーやホイール、ペダルなどに自由に割り当てます。中でも、プレッシャーをブレスコントローラーに割り当てて、WX5を使って演奏すると、トランペッター気分にどっぷり浸れます。

他のボイスが選ばれた場合も同じです。

サックスのボイスが選ばれると、VA音源の基本モデルはボイスデータにしたがってすぐさまサックスの形に変身します。竹製のリードが1枚ついたマウスピースと、金属製の円錐形の管、そして音階を演奏するためのキーが付いている。と言う具合に、形、大きさ、材質感など、細かいところまでモデリングされます。そして、プレッシャーをかけることで音が発生するわけです。

同様に、バイオリンのボイスが選ばれると、基本モデルはバイオリンの形に変形します。ただし、バイオリンの場合は弦をこすって音を出す擦弦楽器なので、様子は少し違います。音を発生する部分がリードではなく、弓になります。そのため、プレッシャーの意味合いも、息の強さではなく弦を弾く弓の早さということになります。弓と弦によって発生した音は、駒を通って胴に伝わり、胴鳴りの感じが付加されてバイオリンの音になります。


以上が、VA音源の仕組みです。

従来の音源とあまりにも違う仕組みに、驚かれたのではないでしょうか。

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